ここまでに、都道府県や市町村の役割を色々見てきましたのでまとめます。
市町村の役割
保険料決定のための権限
市町村は介護保険の保険者として、保険料の決定や徴収を適正に行うために必要な情報を確認する権限を持っています。
市町村は保険料の決定や給付に必要がある場合、年金保険者(日本年金機構など)に対して、老齢年金等の給付状況に関する資料提供を求め、被保険者の収入を調査することができます。
| 根拠法 | 条文 |
|---|---|
| 介護保険法第202条 | 市町村は、被保険者の資格、保険給付、地域支援事業及び保険料に関して必要があると認めるときは、被保険者、被保険者の配偶者若しくは被保険者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者又はこれらであった者に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員に質問させることができる。 |
| 介護保険法第203条 | 市町村は、保険給付、地域支援事業及び保険料に関して必要があると認めるときは、被保険者、被保険者の配偶者若しくは被保険者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者の資産若しくは収入の状況又は被保険者に対する老齢等年金給付の支給状況につき、官公署若しくは年金保険者に対し必要な文書の閲覧若しくは資料の提供を求め、又は銀行、信託会社その他の機関若しくは被保険者の雇用主その他の関係人に報告を求めることができる。 |
| 介護保険法第68条の5 | 市町村は、要介護被保険者等についての保険給付差止の記載に関し必要があると認めるときは、当該要介護被保険者等の加入する医療保険者に対し、当該要介護被保険者等に係る医療保険各法の規定により徴収される保険料(地方税法の規定により徴収される国民健康保険税を含む)又は掛金の納付状況その他厚生労働省令で定める事項について、厚生労働省令で定めるところにより、当該要介護被保険者等の加入する医療保険者に対し、情報の提供を求めることができる。 |
事業者に対する権限
市町村は、介護予防支援事業者や住宅改修を行う者など、事業者に情報提供を求めることもできます。
| 根拠法 | 条文 |
|---|---|
| 介護保険法第115条の30の2 | 市町村長は、介護予防サービス計画の検証の実施に当たって必要があると認めるときは、指定介護予防支援事業者に対し、介護予防サービス計画の実施状況その他の厚生労働省令で定める事項に関する情報の提供を求めることができる。 |
| 介護保険法第23条 | 市町村は、保険給付に関して必要があると認めるときは、当該保険給付を受ける者若しくは当該保険給付に係る居宅サービス等を担当する者若しくは保険給付に係る第四十五条第一項に規定する住宅改修を行う者又はこれらの者であった者に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を求め、若しくは依頼し、又は当該職員に質問若しくは照会をさせることができる。 |
市町村条例で定める内容
・区分支給限度基準額の上乗せ
・地域包括支援センターの職員配置
・普通徴収の納期や分割回数など
介護サービスの区分支給限度基準額は国が基準を定めることとなっていますが、市町村は条例により一定の範囲で上乗せすることができるとされています。つまり、地域の実情に応じて、要介護度ごとの限度額に独自に給付を追加し、サービス費用や供給状況などの給付を拡充することが認められています。
地域包括支援センターは市町村が設置主体のため、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などの職員配置は、国が示す基準を参考に、市町村が条例で地域の実情に合わせて決定します。ただし国の基準が最低基準であり、市町村条例がそれを下回ることはできません。
都道府県の役割
都道府県は、介護保険法第4条および第5条第2項に基づき、介護保険事業が健全かつ円滑に運営されるよう、市町村に対して必要な助言や適切な援助を行う責務があります。保険者は市町村ですが、都道府県は後方支援や指導を行い、市町村が円滑に制度運営できるよう支える役割を担っています。
都道府県は、介護保険法第5条に基づき、認知症に関する知識の普及や啓発に努める責務があります。
都道府県条例で定める内容
介護保険施設の入所定員や施設運営の基準は都道府県の条例で定められます。
介護サービス情報公表制度の運営
介護サービス情報の公表制度を運営・管理する主体は都道府県であり、それに付随する調査・公表事務は都道府県の管轄です。
ケアマネ試験の実施
介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)は都道府県が実施するため、介護支援専門員(ケアマネジャー)の登録や登録取消を行う権限も都道府県にあります(介護保険法第69条・第70条)。
都道府県と市町村の役割
| 都道府県・政令市・中核市 | 市区町村 | |
|---|---|---|
| 事業所指定 | 市町村が指定するもの以外 | ・地域密着型サービス ・地域密着型介護予防サービス ・居宅介護支援 ・介護予防支援 |
| 支給決定 | 全て | |
| 要介護認定 | 介護認定審査会の設置 | |
| 不服申立て | 介護保険審査会の設置 | |
| 財政 | 財政安定化基金の設置 | |
| 介護サービス情報 | 介護サービス情報の公表 |
財政安定化基金
都道府県は財政安定化基金を設置して、市町村の介護保険財政が不足した際に資金を援助し、介護保険の財政安定化を図らなければなりません。
財政安定化基金の財源拠出割合は、国:都道府県:市町村(第1号保険料)=1:1:1で、三者がそれぞれ3分の1ずつ同じ割合で拠出します。第2号被保険者(40〜64歳)の保険料は含まれず、すべて第1号被保険者(65歳以上)の保険料から賄われます。
基金の運用によって生じた利子などの収入は、他の目的に使うことはできず、すべて基金に繰り入れて管理することとされています。
| 機関 | 設置 | 役割や目的など |
|---|---|---|
| 財政安定化基金 | 都道府県 | 介護保険制度の財政安定化 |
| 介護認定審査会 | 市町村 | 要介護認定 |
| 介護保険審査会 | 都道府県 | 要介護認定などの不服申立て |
| 介護給付費等審査委員会 | 国民健康保険団体連合会 | ・介護サービス事業者から提出された介護給付費請求書(レセプト)の審査 |
要介護認定は市町村が行うので、その不服申立ては「都道府県」が設置する介護保険審査会に行います。介護保険審査会は、被保険者を代表する委員(3人)、市町村を代表する委員(3人)、公益を代表する委員(3人以上で政令で定める基準に従い条例で定める員数)で構成されます。
国民健康保険団体連合会(国保連)の役割として、レセプトの審査以外に、「介護保険サービスに関する苦情対応、事業者への助言や指導」を覚えておいてください。

国保連には事業者に助言や指導ができる強い権限があるんだ。
過去問
第23回 問題4
介護保険制度における都道府県の事務として正しいものはどれか。2つ選べ。
1 財政安定化基金の設置
2 地域支援事業支援交付金の交付
3 第2号被保険者負担率の設定
4 介護保険審査会の設置
5 介護給付費等審査委員会の設置
介護保険制度における国、都道府県、市町村は、それぞれ異なる役割を持っており、保険者である市町村を、国や都道府県が支援する仕組みとなっています。ここでは安定した財源の確保のための保険料の徴収や、都道府県における財政安定化基金の仕組み、介護保険審査会の設置と運営など、それぞれの行政機関としての関わりなどを理解することが重要なポイントとなります。
1 財政安定化基金の設置
これは正解。財政安定化基金は各都道府県に設置され、市町村の介護保険財政が悪化した際に資金の貸付や交付を行う機関です。これは第1号被保険者の総数や所得の違いなどによって、市町村間での財政に格差が生じた場合に備え、国・都道府県・市町村がそれぞれ3分の1ずつ財源を負担し必要な時に資金を交付することで市町村財政の安定化を図ります。試験では「市町村に設置する」などの間違い選択肢が頻出なので役割と設置機関を間違えない様に覚えましょう。
2 地域支援事業支援交付金の交付
これは誤り。地域支援事業支援交付金とは、市町村が実施する地域支援事業の費用をまかなうために、国から交付される資金のことです。これは都道府県が交付するのではなく、国が社会保険診療報酬支払基金を通じて支払うこととされています。
3 第2号被保険者負担率の設定
これは誤り。第2号被保険者(40〜64歳)の負担割合の設定は都道府県ではなく、国が介護保険財源全体のバランスを考慮して、全国一律的に政令にて定めるものです。また、3年ごとに策定される介護保険事業計画によって見直されています。
4 介護保険審査会の設置
これは正解。介護保険審査会は、市町村が行った行政処分に対して被保険者が不服申し立て(審査請求)を行う機関で、市町村の上級庁である都道府県に設置されます。市町村が行う行政処分については、要介護認定の決定や、被保険者証の交付に関する処分、保険料の滞納処分に関することなど、これらの処分が法令や条例に基づいて適法・適切に行われたかどうかを審査します。処分に不服がある被保険者は、原則として処分を知った日の翌日から起算して3か月以内に審査請求を行うことができます。
5 介護給付費等審査委員会の設置
これは誤り。介護給付費等審査委員会は、介護サービス事業者から請求された介護報酬の請求内容が適正がどうかを審査する機関で、国民健康保険団体連合会(国保連)に設置されます。介護保険審査会や介護認定審査会など、類似した機関があるため、混同しないように注意が必要です。
第23回 問題16
介護保険に関して市町村が有する権限について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 被保険者の保険料に関し、被保険者の収入について調査する。
2 住宅改修を行う者に対し、文書の提出を求める。
3 介護給付費・地域支援事業支援納付金の算定のために、医療保険者から報告を徴収する。
4 被保険者に対する老齢等年金給付の支給状況について、年金保険者に対し資料の提供を求める。
5 介護サービス情報について、指定居宅サービス事業者を調査する。
介護保険制度は、市町村が保険者として、保険料の賦課・徴収、給付管理、適正化のための調査などの権限を有しており、被保険者の所得調査や年金の受給状況、住宅改修に関する届け出など、不正を防ぎ適正な給付を行うための権限を幅広く有している事がポイントです。
1 被保険者の保険料に関し、被保険者の収入について調査する。
これは正解。市町村は介護保険法第202条に基づき、保険加入者から集める保険料を決定するにあたり、被保険者の所得や収入を調査することができます。これは、適切な保険料を決定するために不可欠な権限であると言えます。
2 住宅改修を行う者に対し、文書の提出を求める。
これは正解。介護保険法第23条に基づいて、市町村は住宅改修を行う者(施工業者や被保険者)に対して、文書その他の物件の提出・提示を求めることができます。不正請求の防止や内容確認の為の権限を持ちます。
3 介護給付費・地域支援事業支援納付金の算定のために、医療保険者から報告を徴収する。
これは誤り。「介護給付費・地域支援事業支援納付金の算定」は、市町村の役割でなく、社会保険診療報酬支払基金の役割で、国や関係機関が中心に行います。したがって、市町村には上記内容の報告を徴収する権限はありません。
4 被保険者に対する老齢等年金給付の支給状況について、年金保険者に対し資料の提供を求める。
これは正解。介護保険法第203条に基づき、市町村は保険料の決定や給付に必要がある場合、年金保険者(日本年金機構など)に対して、老齢年金等の給付状況に関する資料提供を求めることができるとされています。
5 介護サービス情報について、指定居宅サービス事業者を調査する。
これは誤り。介護サービス情報の公表や、それに伴う指定居宅サービス事業者の調査・公表事務は都道府県の管轄となり、市町村の役割ではありません。
第24回 問題6
介護保険法において市町村が条例で定めることとされている事項として正しいものはどれか。3つ選べ。
1 保健福祉事業
2 区分支給限度基準額の上乗せ
3 市町村特別給付
4 指定介護老人福祉施設に係る入所定員の人数
5 地域包括支援センターの職員の員数
介護保険法において、市町村が地域の実情に応じて条例で定めることができる事項はいくつかあり、代表的なものは、介護保険給付を補うために独自の給付として行う市町村特別給付や、区分支給限度基準額の上乗せなどがあります。また、地域包括支援センターについても、人員配置や運営に関する基準を条例で定めることとされており(介護保険法第115条の46第5項)、地域活動の拠点となる地域包括支援センターの運営(人員・運営基準)は市町村の裁量が大きいため、試験ではここが頻出ポイントとなります。
1 保健福祉事業
これは誤り。保健福祉事業は、市町村が「行うことができる(任意)」事業(介護保険法第115条の50)であるため、「(実施する場合には)条例で定める」ことにはなりますが、制度上必ず設置・規定しなければならない事項ではありません。
2 区分支給限度基準額の上乗せ
これは正解。介護サービスの区分支給限度基準額は国が基準を定めることとなっていますが、市町村は条例により一定の範囲で上乗せすることができるとされています。つまり、地域の実情に応じて、要介護度ごとの限度額に独自に給付を追加し、サービス費用や供給状況などの給付を拡充することが認められています。
3 市町村特別給付
これは正解。「市町村特別給付」とは、介護保険の法定給付とは別に市町村が独自に行う給付を指します。具体的な例として、配食サービスや紙おむつの支給など、通常の介護保険で対象とならないサービスを地域の実情に応じて実施するもので、内容は市町村の条例によって定めることとされています。
4 指定介護老人福祉施設に係る入所定員の人数
これは誤り。指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホームなど)は、都道府県が指定・監督を行う介護保険施設であり、入所定員や施設運営の基準は都道府県の条例で定められ、市町村が条例で定める事項ではありません。試験対策としては、市町村が条例で定める市町村特別給付などと混同しないよう注意が必要です。
5 地域包括支援センターの職員の員数
これは正解。地域包括支援センターは市町村が設置主体のため、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などの職員配置は、国が示す基準を参考に、市町村が条例で地域の実情に合わせて決定します。ただし国の基準が最低基準であり、市町村条例がそれを下回ることはできません。試験対策としては「国の基準を参考に、市町村が条例で基準を定める」という仕組みを理解することが重要です。
第24回 問題11
財政安定化基金について正しいものはどれか。2つ選べ。
1 市町村は、財政安定化基金を設けるものとする。
2 その財源の負担割合は、国2分の1、都道府県4分の1、市町村4分の1である。
3 財政安定化基金から生ずる収入は、すべて財政安定化基金に充てなければならない。
4 その財源には、第2号被保険者の保険料も充当する。
5 給付費の増大により市町村の介護保険財政に不足が見込まれる場合には、必要な額を貸し付ける。
財政安定化基金は、介護保険の急な給付費増加で市町村の財政が赤字になったときに支援する重要な仕組みです。基金は「都道府県が設置」し、国・都道府県・市町村がそれぞれ3分の1ずつ財源を拠出します。必要に応じて市町村へ資金の貸付や交付を行い、介護保険制度の安定的な運営を確保する役割があります。
1 市町村は、財政安定化基金を設けるものとする。
これは誤り。財政安定化基金を設置するのは市町村でなく「都道府県」の役割です。市町村ごとの介護保険財政が不安定になった場合に、広域的に支援するため都道府県が基金を管理・運営します。
2 その財源の負担割合は、国2分の1、都道府県4分の1、市町村4分の1である。
これは誤り。財政安定化基金の財源拠出割合は、国:都道府県:市町村(第1号保険料)=1:1:1で、3者がそれぞれ3分の1ずつ同じ割合で拠出します。特定の主体が半分を負担するのではなく、三者が公平に責任を分担して制度全体を支える形です。重要な注意点として、通常の介護報酬の公費負担割合(国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%など)とは異なるため、混同しないよう注意が必要です。
3 財政安定化基金から生ずる収入は、すべて財政安定化基金に充てなければならない。
これは正解。基金の運用によって生じた利子などの収入は、他の目的に使うことはできず、すべて基金に繰り入れて管理することとされています。これは基金の財源を維持し、制度の目的に沿って安定的に活用するための仕組みであり、将来の事業や市町村への支援に充てることができるようにしています。
4 その財源には、第2号被保険者の保険料も充当する。
これは誤り。財政安定化基金の財源は、国・都道府県・市町村がそれぞれ3分の1ずつ拠出する公費で構成されています。最大の注意点は、第2号被保険者(40〜64歳)の保険料は一切含まれず、すべてが第1号被保険者(65歳以上)の保険料から賄われます。
5 給付費の増大により市町村の介護保険財政に不足が見込まれる場合には、必要な額を貸し付ける。
これは正解。財政安定化基金は、市町村の介護保険財政が不足した際に資金を援助する仕組みです。不足の理由により対応が異なり、「給付費の増大(見込み違い)」による赤字の場合は、全額が「貸付」となります。一方、「保険料の収納不足(未納)」による赤字の場合は、「2分の1を交付、残り2分の1を貸付」で対応することとされています。
第27回 問題4
介護保険法に定める都道府県の責務として正しいものはどれか。2つ選べ。
1 介護報酬の算定基準を適切に設定しなければならない。
2 介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように、必要な助言及び適切な援助をしなければならない。
3 介護保険事業が効率的に行われるように、年金保険者を指導・監督しなければならない。
4 認知症に関する知識の普及及び啓発に努めなければならない。
5 高齢者が経済活動に参加することを促さなければならない。
1 介護報酬の算定基準を適切に設定しなければならない。
これは誤り。介護報酬(サービスの公定価格)の算定基準を定める権限は、都道府県ではなく国(厚生労働大臣)にあります。介護報酬は全国統一の基準で設定され、介護保険法第77条に基づき、厚生労働大臣が中央社会保険医療協議会の意見を聴いて定めます。都道府県には独自に報酬基準を設定する権限はありません。
2 介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように、必要な助言及び適切な援助をしなければならない。
これは正解。都道府県は、介護保険法第4条および第5条第2項に基づき、介護保険事業が健全かつ円滑に運営されるよう、市町村に対して必要な助言や適切な援助を行う責務があります。保険者は市町村ですが、都道府県は後方支援や指導を行い、市町村が円滑に制度運営できるよう支える役割を担っています。
3 介護保険事業が効率的に行われるように、年金保険者を指導・監督しなければならない。
これは誤り。都道府県には、日本年金機構などの年金保険者を指導・監督する権限はありません。年金保険者は厚生労働省の所管で、介護保険では保険料の特別徴収など限定的な役割のみを担います。都道府県が指導・監督する対象は、介護サービス事業者や指定居宅介護支援事業者などです。
4 認知症に関する知識の普及及び啓発に努めなければならない。
これは正解。都道府県は、介護保険法第5条に基づき、認知症に関する知識の普及や啓発に努める責務があります。これは国や市町村とともに認知症施策を推進する役割を示したものです。高齢化の進展に伴い、認知症対策は重要な課題とされ、都道府県には広域的な立場から普及啓発や施策推進を行う役割が求められています。
5 高齢者が経済活動に参加することを促さなければならない。
これは誤り。介護保険法では、高齢者の「経済活動への参加」を促進する責務は定められていません。制度の目的は、要介護高齢者が自立した日常生活を営めるよう支援することです。就労などの経済活動の促進は、主に高年齢者雇用安定法など他の法律の分野となります。
第27回 問題16
介護保険に関して市町村が有する権限について正しいものはどれか。2つ選べ。
1 被保険者に対する老齢等年金給付の支給状況について、年金保険者に対し資料の提供を求める。
2 要介護認定に関する審査請求事件について、医療保険者に対し必要な報告を求める。
3 被保険者の保険料に関し、被保険者の収入について調査する。
4 介護サービス情報の公表制度に係る報告に関し、指定居宅サービス事業者を調査する。
5 不正の手段により登録を受けた介護支援専門員の登録を消除する。
介護保険制度では、市町村が保険者として制度を運営する主体であり、介護保険法に基づき様々な権限を持っています。具体的には、要介護認定を行う認定権や、保険料徴収のための調査・照会権(介護保険法第203条)、サービス事業者への指定・指導などです。ただし、年金保険者の監督などは市町村の権限ではありません。試験においては、市町村・都道府県・国の役割や権限の違いを整理して理解することが重要です。
1 被保険者に対する老齢等年金給付の支給状況について、年金保険者に対し資料の提供を求める。
これは正解。市町村は介護保険の保険者として、保険料の決定や徴収を適正に行うために必要な情報を確認する権限を持っています。介護保険法第105条に基づき、市町村は年金保険者(日本年金機構など)に対し、第1号被保険者の年金給付額や支給状況について資料の提供を求めることができます。これは年金から保険料を天引きする特別徴収を正確に行うための重要な調査権です。
2 要介護認定に関する審査請求事件について、医療保険者に対し必要な報告を求める。
これは誤り。要介護認定に対する不服申立て(審査請求)は、市町村ではなく都道府県に設置される介護保険審査会が扱います。そのため、市町村が医療保険者に対して審査請求に関する報告を求める権限はありません。審査請求の審査主体は都道府県であり、市町村の権限外となります。
3 被保険者の保険料に関し、被保険者の収入について調査する。
これは正解。市町村は介護保険の保険者として、保険料を適正に決定・徴収するため、介護保険法第203条に基づき被保険者や世帯員の収入などを調査する権限を持っています。これは第1号被保険者の保険料を所得段階別に決定するために必要な権限です。試験対策としては「市町村は保険料算定のため収入調査ができる」と覚えましょう。
4 介護サービス情報の公表制度に係る報告に関し、指定居宅サービス事業者を調査する。
これは誤り。介護サービス情報の公表制度を運営・管理する主体は都道府県であり、市町村の役割ではありません。そのため、市町村が事業者に対して報告を求めたり、調査を行う権限もありません。試験ではこのような都道府県と市町村の入れ替え問題が多く見られるため注意が必要です。
5 不正の手段により登録を受けた介護支援専門員の登録を消除する。
これは誤り。介護支援専門員(ケアマネージャー)の登録や登録消除(取り消し)を行う権限は、市町村ではなく都道府県知事にあります(介護保険法第69条・第70条)。また、試験の実施も都道府県が担います。介護支援専門員は都道府県ごとの登録制度であるため、市町村には登録を行う権限はありません。
第28回 問題4
介護保険に関する市町村の事務について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針(総合確保方針)を定めなければならない。
2 介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針(基本指針)を定めなければならない。
3 介護保険に関する収入及び支出について、特別会計を設けなければならない。
4 介護報酬の審査及び支払いを国民健康保険団体連合会に委託することができる。
5 普通徴収の方法によって徴収する保険料の納期は、条例で定める。
介護保険制度における市町村の役割については、介護保険の保険者として、保険料の徴収や要介護認定、市町村特別給付など幅広い事務を担っています。試験では、国や都道府県、市町村などの役割や権限を問われる問題が頻出なため、それぞれの役割を明確に覚えることで得点につなげることができます。
1 地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針(総合確保方針)を定めなければならない。
これは誤り。地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針を定めるのは、国(厚生労働大臣)の仕事です。市町村は総合確保方針に基づいて市町村介護保険事業計画を策定します。
2 介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針(基本指針)を定めなければならない。
これは誤り。保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針を策定するのも国(厚生労働大臣)の役割です。
3 介護保険に関する収入及び支出について、特別会計を設けなければならない。
これは正解。市町村は介護保険に係る保険料の管理や給付費など、一般会計の予算と切り離して管理するように定められています(特別会計)。これは介護保険事業財政の透明性を確保するために設けることとされています。
4 介護報酬の審査及び支払いを国民健康保険団体連合会に委託することができる。
これは正解。市町村は、介護報酬の審査及び支払いを国民健康保険団体連合会に委託することができるとされています。実務上、多くの市町村が委託していますが「義務(しなければならない)」ではないところにも注意が必要です。
5 普通徴収の方法によって徴収する保険料の納期は、条例で定める。
これは正解。介護保険料の普通徴収とは、市区町村から送付される「納付書」や「口座振替」を利用して、被保険者自らが介護保険料を納める方法のことです。一方、特別徴収とは年金から天引きする方法をいいます。また、普通徴収の納期や分割回数などは市町村が条例で定めるものとされています。
第28回 問題11
介護保険の財政安定化基金について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 都道府県が設置する。
2 市町村からの財政安定化基金拠出金の財源は、第1号被保険者の保険料である。
3 財源には、第2号被保険者の保険料も充当する。
4 市町村は、介護保険財政に不足が見込まれる場合に活用することができる。
5 財政安定化基金から貸付けを受けた市町村は、貸付けを受けた年度内に返済しなければならない。
財政安定化基金とは、市町村の介護保険財政が給付費の増加や保険料未納などにより不足した場合に備え、都道府県に設置される基金です。財源は国・都道府県・市町村がそれぞれ3分の1ずつ負担し、市町村に対して資金の貸付けや交付を行い、介護保険財政の安定化を図る制度です。
1 都道府県が設置する。
これは正解。財政安定化基金は、市町村の介護保険財政をサポートするために、すべての都道府県に設置されています。市町村の介護保険財政が一時的に不安定になった際に、広域的な立場で財政の支援を担うための基金とされており、国・都道府県・市町村の三者が財源を負担します。
2 市町村からの財政安定化基金拠出金の財源は、第1号被保険者の保険料である。
これは正解。財政安定化基金の財源は、国・都道府県・市町村がそれぞれ3分の1を負担しますが、国と都道府県は公費、市町村分は第1号被保険者の保険料が財源とされています。また第2号被保険者の保険料はいずれの負担分にも充当されません。
3 財源には、第2号被保険者の保険料も充当する。
これは誤り。選択肢2の解説通り、市町村負担分の財源は第1号被保険者の保険料のみです。医療保険者が集める第2号被保険者の保険料は、この財政安定化基金の財源としては使われません。
4 市町村は、介護保険財政に不足が見込まれる場合に活用することができる。
これは正解。市町村は、保険料収納不足や給付費増大により介護保険財政に不足が見込まれる場合、財政安定化基金から貸付または交付を受けることができます。財政悪化への備えとして都道府県が市町村を支援する重要な仕組みです。
5 財政安定化基金から貸付けを受けた市町村は、貸付けを受けた年度内に返済しなければならない。
これは誤り。財政安定化基金からの貸付金は、貸付けを受けた年度内に返済する規定はありません。貸付金は次期介護保険事業計画期間において、第1号被保険者の保険料を財源として償還されます。
次の記事
次は、介護保険事業状況報告で介護保険制度の近況を見ていきましょう。


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