ケアマネ試験の中心は介護保険制度ですが、介護保険制度は5種類の社会保険制度の1つで、さらにその社会保険制度は社会保障制度の1つです。まずは社会保障全体を見ていきましょう。その中で介護保険制度がどこに位置付けられているのか知ってください。
さらに試験の出題範囲は、生活保護制度や生活困窮者自立支援制度にも及びます。見ていきましょう。

社会保障制度の構造
日本の社会保障制度は、
②社会福祉制度
③生活困窮者自立支援制度
④生活保護制度
と4層構造になっています。

社会保険制度
我々に馴染みのある年金や医療保険などは「社会保険制度」に該当します。
社会保険制度はすべての国民が対象で、この社会保険制度によって国民は健康で文化的な最低限度の生活を保証されるよう設計されることが理想で、日本の社会保障制度の中心は「社会保険制度」です。
日本の社会保険制度は、年金、医療、雇用、労災、介護の5種類の保険制度で構成されます。

介護保険はここにあった!
5種類の社会保険の中でも、2000年に最後にできたのが介護保険だよ。
しかし、日本は資本主義国家ですから高所得者も低所得者もいて、どうしても貧富の差が生まれてきます。
すると社会保険制度だけでは救われない人も出てくるわけです。
社会福祉制度
例えば高齢、障害や病気、母子家庭などが原因で低所得に陥ってしまう人が必ず出てきます。
資本主義社会ではこのような格差がどうしても生まれるので、第二の社会保障制度として「社会福祉制度」を設け、低所得者を救済する仕組みができています。
このように日本の社会保障制度には、全国民を対象とした社会保険制度と、それでは救われない低所得者向けの社会福祉制度がありますが、それでもこれら2つの網から漏れ落ちてくる人がでてきます。
そのために最後のセーフティーネットとして、生活保護制度があります。
生活保護制度
社会保障制度の中でも生活保護制度の歴史は最も古く、戦後すぐに旧生活保護法ができています。
元々、生活保護法だけで救貧政策が実施されていた日本に、障害者や児童に向けた社会福祉制度ができ、そして社会保険制度が充実してきました。
生活保護法は憲法第25条で保証される生存権を根拠として「健康で文化的な最低限度の生活」が保証されています。
ギリギリの生活ではなく「健康で文化的な」生活が保証されているわけですから、かなり手厚い保障がされますが、それ故に生活保護に一度陥ってしまうとなかなか抜けられない仕組みになってしまっています。

最低賃金で週5日、毎日8時間働くよりも生活保護を受けていた方が収入が多かったりするから、当然生活保護から抜け出して働こうとはなかなか思わないよね。
長らく日本の社会保障制度はこれら3層構造になっていたのですが、急増する生活保護受給者に対応し生活保護一歩手前で救う仕組み、生活保護制度に次ぐ第二のセーフティーネットが求められてきます。
生活困窮者自立支援制度
生活保護の1歩手前で支える「生活困窮者自立支援制度」は2015年にスタートしました。

もともと日本の社会福祉制度の主たる対象は「高齢者」「障害者」「児童」の3者でした。

高齢福祉は老人福祉法、障害福祉は障害者総合支援法、児童福祉は児童福祉法が中心だよ。
しかし近年はこの3者に該当しない人達が困窮する非常に複雑な社会になってしまいました。
例えば働き盛りの40~50代の孤独死の問題、これは福祉に繋がれている高齢者よりも福祉と無縁の稼働年齢層の人達が社会的に孤立し、誰からも見つけられずひっそりと亡くなるという現代特有の社会問題です。
さらに、ワーキングプア、ニート、ひきこもり、ネットカフェ難民などなど、単なる経済的困窮だけではない様々な形の困窮や社会的孤立が蔓延しています。

高齢者でも、障害者でも、児童でもない人が困窮する世の中になってしまったんだね。
このような人々の救済にはこれまで生活保護制度しかなかったのですが、近年は生活保護受給者が急増し国家財政を圧迫するようになってしまったため、生活保護の一歩手前で救済する仕組みが求められ、生活困窮者自立支援制度ができました。
各制度の対象
1962年「社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申及び社会保障制度の推進に関する勧告」によると、それぞれの対象は以下のようになります。
| 制度 | 対象 |
|---|---|
| 社会保険制度 | 一般所得者層 |
| 社会福祉制度 | 低所得者層 |
| 生活保護制度 | 貧困階層 |
社会扶助制度とスティグマ
上で見てきた生活保護制度や生活困窮者自立支援制度などの「社会扶助制度」は特定の人達だけに選別主義的に支援を提供し、その財源は全て税金です。
社会扶助制度のこのような性格から、その支援を受ける人達はスティグマを抱えることになります。
特に生活保護制度は社会扶助の中でも「公的扶助」と呼ばれ、スティグマの問題が付きまといます。
スティグマとは「負の烙印」と訳されますが、社会から個人に押し付けられたネガティブなレッテルのことです。
だからこそ、スティグマを抱えることのない社会保険制度が社会保障の中心になっているのです。
社会保険制度は特定の人ではなく一般人が対象で、財源もほとんどが保険料で賄われているので、社会保険制度を利用していてスティグマを抱えることはありえません。
まとめ
このように日本の社会保障制度は「社会保険制度」を根幹としつつも、それでは救済できない人が社会保険の網からもれ、さらにその下の社会福祉の網からも漏れる人が続出し、生活困窮者自立支援制度が満足に機能していると言いきれない現状では、これからも最後のセーフティーネットである生活保護の網にかかる人たちがどんどん増えると思われます。
第一のネットである「社会保険制度」は、保険制度ですから保険料を支払って制度に加入することでその恩恵を受ける事ができます。
日本の社会保障制度の根幹はこの社会保険制度で、全ての国民が保険料を払って加入しているのです。

年金や医療保険は、国民全員が加入しているよね。
国民皆保険・皆年金制度というんだよ。
第二のネットである「社会福祉制度」は利用者が保険料を拠出するわけではなく、一部利用料以外は全て税金で賄われます。
社会保険制度は「応益負担」(受けた益に応じた負担)、社会福祉制度は「応能負担」(支払い能力に応じた負担)が基本となっています。

社会保険と社会福祉の違いはしっかり押さえてね。保険料を払って非常事態に備えるのが社会保険、社会的に弱い立場の人を公費で支えるのが社会福祉だよ。
第三のネットである「生活困窮者自立支援制度」は、社会福祉制度の狭間で福祉の網から漏れてくる人たちを救うためにあります。
さらに急増する生活保護受給者の保護費が国の財政を圧迫し、生活保護に陥る一歩手前で救う仕組みとしての機能が求められています。
最後のセーフティーネットである「生活保護制度」は、文字通り最後の砦です。
このような社会保障制度の仕組みは、「所得の再分配」の仕組みでもあり、たくさん収入のある人からの税金を貧しい人たちに分配する仕組みにもなっていることが理解できるでしょう。

社会保険は防貧的機能、公的扶助は救貧的機能だね。

過去問
第24回 問題3
社会保険方式の特徴として正しいものはどれか。3つ選べ。
1 国民の参加意識や権利意識を確保し、加入者に受給権を保障する仕組みである。
2 リスク分散の考え方に立つことで、社会保障の対象を一定の困窮者から国民全体に拡大した普遍的な制度となっている。
3 社会保険制度の財源は、原則として公費である。
4 保険料を納付しない者や制度への加入手続をとらない者は、給付を受けられないことがある。
5 給付は、受給者があらゆる資産を活用することを要件として行われる。
社会保険方式とは、病気・高齢・失業などの生活上のリスクに備え、国民が保険料を出し合って支え合う社会保障の仕組みです。保険料を納めることで給付を受ける権利が保障される点が特徴で、財源は主に保険料と公費で構成されます。試験対策としては、公的扶助(生活保護)との違いとともに、社会保険の理念や財源構成を理解しておくことが必要です。
1 国民の参加意識や権利意識を確保し、加入者に受給権を保障する仕組みである。
これは正解。社会保険は、加入者が保険料を負担することで、一定の条件を満たせば権利として給付を受けられる制度です。生活保護のような施しではなく、法律に基づく受給権が保障される点が特徴です。この仕組みにより国民の参加意識や権利意識が高まり、制度への信頼が保たれます。社会保険は「保険料負担に基づく権利給付」と理解しておくと良いでしょう。
2 リスク分散の考え方に立つことで、社会保障の対象を一定の困窮者から国民全体に拡大した普遍的な制度となっている。
これは正解。社会保険は、多くの人が保険料を出し合い、病気や介護などのリスクを社会全体で分担するリスク分散の仕組みです。そのため対象は生活困窮者だけでなく、広く国民全体に及ぶ普遍的な制度となっています。これは困窮者を対象とする公的扶助(生活保護)とは全く異なる点です。
3 社会保険制度の財源は、原則として公費である。
これは誤り。社会保険の基本財源は、加入者が納める保険料です。国庫負担などの公費も一部投入されますが、あくまで補助的なものであり、制度の中心は保険料によって支えられています。税金を主な財源とする公的扶助(生活保護)とは仕組みが異なるため、社会保険と公的扶助の仕組みを間違えないようにしましょう。
4 保険料を納付しない者や制度への加入手続をとらない者は、給付を受けられないことがある。
これは正解。社会保険は、加入者が保険料を納付することを前提として給付が行われる制度です。つまり、保険料負担と給付が結びついている点が特徴です。そのため、未加入や保険料未納の場合は、給付が制限されたり受けられないことがあります。これは保険方式の基本的な仕組みであり、リスクを分担する制度に参加している者が給付を受ける権利を持つという考え方です。
5 給付は、受給者があらゆる資産を活用することを要件として行われる。
これは誤り。社会保険では、給付を受けるために資産をすべて活用することは条件とされていません。社会保険は、加入者が保険料を納めることで給付を受ける権利が生じる制度であり、資産状況は原則として問われません。一方、資産の活用を条件として給付を行うのは生活保護などの公的扶助の考え方で、全ての資産を活用する事が前提となります。
第28回 問題1
日本の社会保険制度について適切なものはどれか。2つ選べ。
1 営利企業が保険者となる。
2 公的扶助と比較して、救貧的機能が強い。
3 制度への加入手続をとらない者や保険料を納付しない者は、給付を受けられないことがある。
4 税方式と比較して、給付と負担の関係が明確である。
5 介護保険は、職域保険に位置付けられる。
日本の社会保険制度は医療・年金・雇用・労災・介護の5種類からなり、保険料を支払うことで保険事故(対象となる状態)が発生した際に給付を受けることができます。これは、主として公費で運営される公的扶助(生活保護)とは異なり、給付と負担の関係が明確となっています。介護保険制度も社会保険として分類され、基本的には強制加入となり、介護保険に加入しない者や保険料を納付しない者については給付制限が課せられます。
1 営利企業が保険者となる。
これは誤り。社会保険の保険者は一般の民間保険とは異なり、国・都道府県・市町村・健康保険組合・共済組合などの公的機関や非営利団体に限られ、営利企業が保険者となることはありません。社会保険は利益を目的とせず、国民の生活の安定を図る公的制度である点も覚えておきましょう。
2 公的扶助と比較して、救貧的機能が強い。
これは誤り。一般的に救貧的機能(困窮者の救済)が高いのは生活保護制度などにおける公的扶助であり、社会保険制度は防貧的機能(リスクに備える)が高いとされています。これは、社会保険は保険料の拠出を前提としているため、負担と給付のバランスが明確であるのに対し、公的扶助では給付と負担の対応関係が明確でないことから救貧的機能が強いとされています。
3 制度への加入手続をとらない者や保険料を納付しない者は、給付を受けられないことがある。
これは正解。社会保険は保険料の拠出(納付)を前提とした制度のため、保険に加入しない者や保険料を納付しない者は、給付の差し止めや制限がかかることがあります。また、社会保険は強制加入であり、保険料を確実に徴収することで制度運用の財源を確保するための重要な役割があるからです。
4 税方式と比較して、給付と負担の関係が明確である。
これは正解。社会保険は、保険料負担に応じた給付がなされる仕組みであり、給付と負担の関係が明確です。一方、税方式(全額公費)による給付は、困窮に陥った者などを対象としているため(負担するしないに関わらず)、関係性が不明確です。
5 介護保険は、職域保険に位置付けられる。
これは誤り。職域保険とは会社員や公務員など、働く場所(職場)をベースに加入する社会保険のことです。現在の制度では、健康保険(医療)や厚生年金保険(年金)、労働保険(雇用・労災)などがあります。介護保険は地域の市町村等が保険者となるため、職業や勤務地には関係なく職域保険には含まれません。
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次は、最後のセーフティネット「生活保護制度」を見てみましょう。



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