ここからは権利擁護に入っていきます。認知症高齢者や障害者など、自身の意思を表明したり意思決定することが困難な人々のための権利擁護制度を見ていきましょう。

権利擁護(アドボカシー)
権利擁護は、高齢者や障害者など、社会的に支援が必要な人々の「尊厳」と「基本的人権」を守り、その人らしい自立した生活や意思決定を支援する取り組みです。
アドボカシー
アドボカシーとは、社会的に立場の弱い人や意見を表明することが困難な人に代わって、その権利や主張を代弁し擁護することです。

アドボカシーは、「権利擁護」や「代弁」と訳されるね。
権利擁護のための制度として、成年後見制度と日常生活自立支援事業を見ていきましょう。

成年後見制度
成年後見制度は、本人の判断能力が低下してから利用する法定後見と、本人の判断能力が低下する前に登記しておく任意後見の二種類あります。
法定後見制度
法定後見は民法に規定され、判断能力の程度によって「補助」「保佐」「後見」の3類型に分類されています。
3類型
| 成年後見3類型 | 状態 |
|---|---|
| 補助 | 判断能力が不十分 |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分 |
| 後見 | 判断能力を欠く |
補助は判断能力が不十分でも後見開始時に本人の同意が必要なレベルの判断能力を有しています。
ですので代理権、同意権、取消権の付与については本人の同意のうえで家庭裁判所が審判します。
保佐は判断能力が著しく不十分なので取消権も同意権も付与されます。
同意権が付与されているということは、被保佐人は保佐人の同意がなければ法律行為ができないということです。同意なしに法律行為を行った場合に取り消すことができるように取消権とセットで付与されているのです。
後見の場合はほとんど判断できないほど判断能力が乏しいので代理権と取消権が付与され、同意権はありません。そもそも同意権は本人の意思表示に対する同意ですので意思表示が困難な人に対して同意権は意味がありません。
| 制度 | 代理権 | 同意権 | 取消権 | 開始時の本人同意 | 開始時の精神鑑定 | 利益相反 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 補助 | △ | △ | △ | 要 | 不要 | 臨時補助人 |
| 保佐 | △ | 〇 | 〇 | 必ずしも必要ない | 要(原則) | 臨時保佐人 |
| 後見 | 〇 | × | 〇 | 必ずしも必要ない | 要(原則) | 特別代理人 |
△:家庭裁判所が認めた場合

日用品の購入などの日常生活行為と結婚などの身分行為は取消権の例外だよ。
法定後見制度の流れ
| 順序 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 家庭裁判所に申立 | 申立てができるのは、本人、配偶者、4 親等内の親族、成年後見人等、市区町村長、検察官などです。 補助対象者については判断能力が不十分という程度ですので、申立てにおいては原則本人の同意が必要 です。 |
| 2 | 家庭裁判所による審問や調査 | 家庭裁判所の調査官が聞き取りなどを行います。 |
| 3 | 本人の判断能力を鑑定 | 補佐と後見については原則鑑定が必要になります。 鑑定には費用がかかる場合があります。 |
| 4 | 審判 | 支援内容が決定されます。 |
申立てができる4親等以内の親族ってどこまででしょうか。
4親等は「いとこ」までなので、その配偶者も4親等ですが、「親族」は3親等以内の姻族ですので、いとこの配偶者は「親族」ではありません。
つまり、いとこは成年後見申立人になれますが、いとこの配偶者は申立人になれないということです。

任意後見制度
任意後見制度は任意後見契約法に規定され、自分がまだ十分判断能力がある時に、将来認知症などになったときのために後見人を定めておきます。
自分で信用できる人を決めておけるのは安心できますね。
信頼できる子供や兄弟でもいいですし、司法書士や弁護士にしてもいいわけです。
法定後見と任意後見の大きな違いは本人が後見人を決めたかどうかです。
本人が後見人を決めるところからスタートしていますので、任意後見制度は本人の意思を尊重します。
この大きな違いが後見人の権利違いにも表れてきます。
任意後見制度の流れ
| 順序 | 内容 | 補足等 |
|---|---|---|
| 1 | 契約を締結 | 任意後見人になってほしい人と本人が契約を結びます。 |
| 2 | 公証役場で公正証書を作成 | 公正証書作成の手数料や印紙代がかかります。 |
| 3 | 法務局に登記 | その後、認知症の症状が出てきた・・・ |
| 4 | 家庭裁判所に申立て | 本人、配偶者、4 親等内の親族、任意後見受任者などが申立てをします。 |
| 5 | 家庭裁判所が任意後見監督人を選任 | 任意後見監督人は任意後見人の仕事をチェックする人なので任意後見人の配偶者や直系血族、兄弟姉妹は任意後見監督人にはなれません。 |
| 6 | 任意後見人の仕事が開始 |

後見類型が保佐・補助であれば、同意権の範囲内で本人の法律行為を取り消すことができます。しかし、任意後見人には、この同意権と取消権がありません。任意後見制度は、本人の意思で後見人を選定していることもあって、「本人の意思」を尊重するためです。
後見人の役割
後見人の役割は、財産管理と身上監護(身上保護)です。
財産管理
● 預金通帳の管理
● 年金や保険金等の収入受取など
<家庭裁判所の許可が必要な3点>
● 成年被後見人の自宅である土地や建物などの不動産の処分(借家も含むため賃貸借契約の解約なども)
● 成年被後見人宛ての信書等の郵便物の転送(2016 年~)
● 成年被後見人の死体の火葬または埋葬に関する契約の締結その他相続財産全体の保存に必要な行為(2016 年~)
身上監護
● 生活環境の整備
● 施設の入退所の契約
● 被後見人の治療や入院の手続き
後見人ができないこと
● 身分行為(養子縁組、結婚届や離婚届の提出、遺言書の作成など)
● 医療同意(手術などの医療行為の同意、延命治療の拒否、臓器提供の意思表示など)
● 日常生活上の消費の取消(日用品の購入など)
● 被後見人の保証人になること
● 利益相反となる行為

「日用品の購入」と「結婚などの身分行為」には取消権が及ばないことは覚えておいて。
利益相反
たとえば、子どもに知的障害があり、その母親が後見人をしている場合、父親が亡くなったとき、相続権は母親と子にあるため相続の受取りに関しては利益の相反があります。母親が後見人として子の代わりに子の相続を放棄することにすれば、母親の相続額が増えます。このように、母親自身の利益を優先させてしまう可能性があるので、利益相反のときは補助の場合は臨時補助人、保佐の場合は臨時保佐人、後見の場合は特別代理人を選任しなければなりません(それぞれ、補助監督人、保佐監督人、成年後見監督人が選任されている場合は不要)。ただし、任意後見制度では任意後見監督人が必ずいるため選任は不要です。

福祉の現場で働く人は、利用者さんに後見人がついていたら、その人との連携も重要になってくるよ。たとえば、身寄りのない利用者さんが手術をするときに後見人がついていても、後見人に医療同意はできないなど後見人ができないことを理解しておくことも重要だよ。
法定後見と任意後見の比較
法定後見では後見人を家庭裁判所が選任しますが、任意後見では本人が任意後見人を決めるので、家庭裁判所が監督するために任意後見監督人を家庭裁判所が選任します。つまり、法定後見でも任意後見でも家庭裁判所の関与があり、成年後見制度は使いにくいと言われる原因にもなっています。
そのため、家庭裁判所が関与しない家族信託が利用されます。家族信託は判断能力が低下する前に信頼できる家族などに財産を信託しておける仕組みです。
| 法定後見 | 任意後見 | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 民法 | 任意後見契約法 |
| 契約時の本人の状態 | 判断能力低下 | 判断能力あり |
| 発効 | 後見開始の審判確定 | 任意後見監督人の選任後 |
| 後見人 | 家庭裁判所が選任 | 本人が決める |
| 監督人 | 監督人は必須ではない | 家庭裁判所が任意後見監督人を選任 |
未成年後見制度
未成年者は、法律上自分では財産管理や契約行為等ができず、身上面での監護を必要としています。
親権者の死亡等のため未成年者に対し親権を行う者がない場合に、家庭裁判所が、未成年者本人や親族、その他の利害関係者(児童相談所など)の申立てにより未成年後見人を選任します。

任意後見契約のように法務局に登記されるものではないよ。
成年後見関係事件の概況
「令和5年成年後見関係事件の概況」(最高裁判所事務総局家庭局)によると、成年後見制度の利用者数は約25 万人(後見72%、保佐21%、補助6%、任意後見1%)となっています。
開始原因
2位 知的障害
3位 統合失調症
成年後見制度の開始原因としては6割以上が認知症によるものです。
認知症の場合は高齢化してから法定後見制度を利用するという形と、認知症になる前から任意後見制度を利用するという形がありますが、知的障害の場合は生まれてからずっと知的障害なわけですから法定後見制度を利用するという形になりますね。
申立て理由
2位 身上保護
3位 介護保険契約
申立て理由は「預貯金等の管理解約」が最多です。
結局、成年後見制度の利用するのは、親が認知症になり、子どもが預金を下ろそうとしてもできないとなったときに、その子が法定後見制度を利用しようとするケースが多いのでしょう。
下にもありますが、申立人として一番多いのは「子」ですし。
申立人
2位 子
申立人は市区町村長が最多です。以前は本人の子が最も多かったのですが、2020年に逆転しました。
申立てをできるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、市町村長などに限られています。
後見人
2位 弁護士
3位 社会福祉士
後見人になるのは司法書士が最も多いというのは驚きで、家族がなっているものだとばかり思っていました。
近年は家族ではなく司法書士や弁護士といった専門職が後見人になる例が増えています。
後見人になると毎月2万円程の報酬がもらえ、管理すべき財産額が多いとさらに報酬額が増えますので、独立型社会福祉士として働く方にとっても重要な仕事になっています。
ただ、専門職の後見人にも限りがあるので、市民後見人という親族でも専門職でもない一般市民がボランティアのような形で後見人になる例もあります。
市民後見人の研修は市町村が行うことになっています(養成研修関係は都道府県の仕事であることが一般的でしたが、これは例外です)。

申立人は市町村長、後見人は専門職、社会的孤立の世相を反映している気がするね。
後見人の欠格事由&被後見人の欠格条項
後見人の欠格事由
民法には後見人の欠格事由として以下の者が規定されています。
・未成年者
・家庭裁判所に免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
・破産者
・被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直径血族
・行方の知れない者

上記に該当しなければ後見人になれるので、親族や専門職以外でも家庭裁判所に選任されればOK。社会福祉法人やNPO法人などの法人も後見人になれる法人後見もあるよ。
被後見人の欠格条項
成年後見制度を利用した本人は判断能力が不十分ということで、制度利用者はこれまで医師や社会福祉士等の資格や公務員などの地位を失うなど、180以上もの資格に対して制限を受けることになっていました。
しかし、このような内容は人権侵害でもあり、成年後見制度利用の障害にもなってきたことから「欠格条項」の見直しが進められ、2019年に「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」が成立し、多くの法律で欠格条項が無くなりました。

成年被後見人でも社会福祉士になれるんだね。
成年後見制度利用支援事業
成年後見制度の利用を促進するため、特に必要とされる高齢者や知的障害者に対して、「成年後見制度利用支援事業」があります。
この制度は制度申立費用や後見人の報酬を助成するものです。
介護保険制度
2006年の介護保険法改正で地域支援事業が創設され、成年後見制度利用支援事業が地域支援事業の任意事業として創設されました(市町村が実施主体)。
障害者総合支援法
2006年に障害者自立支援法施行され、地域生活支援事業として成年後見制度利用支援事業が創設され、2012年から必須事業になりました。
高齢者向けは任意事業で知的障害者向けは必須事業です。
高齢者は認知機能が十分なかたも多いですが、知的障害者は生まれつき知的障害があって判断能力が十分ではありませんから、国としては知的障害者の方が必要性が高いという認識でしょうか。
まとめ
法定後見制度と任意後見制度をまとめます。
任意後見制度と法定後見制度の決定的な違いは、本人の意思で後見人を選んだかどうかです。この決定
的な違いが、さまざまな権限にかかわっていますので、よく比較しながら覚えましょう。
後見類型が保佐・補助であれば、同意権の範囲内で本人の法律行為を取り消すことができますが、任意後見人にはこの同意権と取消権がありません。
任意後見制度は本人の意思で後見人を選定していることもあって、「本人の意思」を尊重しますので、後見人がついたあとも本人の意思が尊重され取り消すことができないことになっています。
| 制度 | 代理権 | 同意権 | 取消権 | 開始時の本人同意 | 開始時の精神鑑定 | 利益相反の場合 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 法定後見制度 | 補助 | △ | △ | △ | 要 | 不要 | 臨時補助人 |
| 保佐 | △ | 〇 | 〇 | 必ずしも必要ない | 要(原則) | 臨時保佐人 | |
| 後見 | 〇 | × | 〇 | 必ずしも必要ない | 要(原則) | 特別代理人 | |
| 任意後見制度 | 〇 | × | × | 本人の意思で | 不要 | 不要(任意後見監督人がいる) | |
| 未成年後見制度 | 〇 | 〇 |
〇 |
||||
△:家庭裁判所が認めた場合
昔は現在の後見にあたる禁治産制度と保佐に当たる準禁治産制度がありましたが、法律行為を制限するための制度でした。
現在の成年後見制度は権利擁護のための制度です。
任意後見制度と法定後見制度の決定的な違いは、本人の意思で後見人を選んだかどうかです。
この決定的な違いが様々なルールに関わっていますのでよく比較しながら覚えましょう。
特に、任意後見と補助は本人の意思決定を尊重する制度設計になっています。
補助はある程度意思決定能力を認めているので開始時の本人同意が必要ですし、代理権、同意権、取消権も本人同意が必要です。任意後見に至っては本人尊重のため、そもそも同意権と取消権がありません。
このような制度の主旨をしっかり理解しておきましょう。
成年後見制度利用促進法
認知症の高齢者は数百万人いるのに、成年後見制度の利用者数は30万人に満たない状況で、利用がなかなか進みません。

成年後見制度は使いにくいって利用が進まないんだ。後見人を一度つけてしまうと一生だからね。
家庭裁判所の監視とか( ̄▽ ̄)
成年後見制度利用促進法の基本理念には、単なる財産管理だけでなく、本人の意思決定の支援、および身上の保護が適切に行われるべきことが明確に定められています。
成年後見制度利用促進法では、認知症高齢者等の権利擁護を社会全体で支えるため、「国の責務」が明確に定められています。国は制度の利用促進に関する施策を総合的かつ計画的に策定・実施する責務を負っています。国が定める「成年後見制度利用促進基本計画」では、誰もが権利擁護支援を受けられるよう、家庭裁判所や専門職、地域の福祉関係機関が一体となった「地域連携ネットワークづくり」が必要とされています。
市町村には、国が定める基本計画を勘案して、地域の実情に応じた成年後見制度の利用を促進する計画を定めるよう「努力義務」が課せられています。市町村における権利擁護の地域ネットワークを構築するため、市町村が主体的な役割を果たすことが法律でも明記されています。
日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業は成年後見制度と並んで、判断能力が不十分な認知症高齢者や知的障害者、精神障害者を対象とした権利擁護のための制度です。
成年後見制度との違いは、成年後見制度を利用する方よりも認知レベルの高い方が対象です。
意思決定支援の一環として自分での意思決定に難があるこれらの方の権利を守るための制度の1つです。
根拠法
2000年に社会福祉事業法が改正された社会福祉法に規定されています。
事業対象
日常生活自立支援事業の対象は、認知症高齢者や知的障害者、精神障害者等で判断能力が不十分で、かつ本事業の契約内容が判断できるレベルの能力を有している方です。
実施主体
実施主体は都道府県社会福祉協議会および指定都市社会福祉協議会です。窓口は市町村社会福祉協議会等になっていることが多いです。

僕の住んでいる京都市は政令指定都市なので、京都府社会福祉協議会と京都市社会福祉協議会の両方で日常生活自立支援事業が実施されてるよ。
日常生活自立支援事業を市町村社会福祉協議会などに委託することができ、委託された市町村社協は基幹的社会福祉協議会と呼ばれます。基幹的社会福祉協議会は全国に1,600以上あります。
| 都道府県社会福祉協議会の事業等 | 内容 |
|---|---|
| 運営適正化委員会の設置 | 運営適正化委員会では、福祉サービスに関する利用者からの苦情解決や、日常生活自立支援事業の運営監視を実施 |
| 日常生活自立支援事業の実施 | 契約締結審査会の設置なども含む |
| 生活福祉資金貸付制度の運営 | 低所得世帯、高齢者世帯、障害者世帯を対象に、資金の貸付等を実施 |
援助の内容
福祉サービスの利用援助や苦情解決制度の利用援助、住宅改造、居住家屋の賃借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助など、具体的には預金の払い戻しや解約などの金銭管理、定期訪問などによる生活変化を察知することなどです。
代理権の範囲は本人が指定した金融機関口座の払戻し手続き等に限定され、契約締結審査会に諮り利用者と実施主体の間で交わす契約書に定められます。
援助者
専門員(常勤)
専門員は初期相談から支援計画の策定、契約締結に関する業務や支援開始後の利用者の状況把握などを行います。
専門員は原則、社会福祉士か精神保健福祉士で研修を受けた者とされています。
生活支援員(非常勤)
生活支援員は支援計画に基づいて具体的な援助を行いますが、毎日仕事があるわけではないので非常勤と定められています。
利用料
実施主体が定める利用料を利用者が負担します。
訪問1回当たり1,200円とか(生活保護受給世帯は無料です)。
契約締結審査会
契約締結審査会は都道府県社会福祉協議会に設置されており、日常生活自立支援事業の契約に当たって契約能力の確認を行います。
成年後見制度との比較
成年後見制度を利用するほどでもないけれど少し判断能力などに難があるという人が利用します。
さらに成年後見制度は様々な場面で法的拘束力は発生しますが、日常生活自立支援事業は本人の意思表出が十分な方が多く援助の内容を見ても分かるように重大な意思決定を伴う援助ではありませんので、法的拘束力云々の話は出てきません。
過去問
第13回 問題59
日常生活自立支援事業について正しいものはどれか。2つ選べ。1 日常生活自立支援事業は、判断能力の不十分な者が、市町村と契約を結び、福祉サービスの利用に関する援助等を受けるものである。2 支援内容には、日用品等の代金を支払うための預貯金の払戻などの金銭管理は含まれない。3 支援内容には、介護保険サービス事業者との契約締結などの手続き援助が含まれるが、介護保険サービスの苦情対応の援助は含まれない。4 支援内容には、要介護認定等に関する調査に立ち会い、本人の状況を正しく調査員に伝えることが含まれる。5 都道府県・指定都市社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会が、事業全体の運営監視と利用者からの苦情解決に当たる。
1 日常生活自立支援事業は、判断能力の不十分な者が、市町村と契約を結び、福祉サービスの利用に関する援助等を受けるものである。
誤りです。日常生活自立支援事業の実施主体は都道府県(指定都市)社会福祉協議会ですので、市町村ではなく都道府県(指定都市)社会福祉協議会と契約を結びます。
2 支援内容には、日用品等の代金を支払うための預貯金の払戻などの金銭管理は含まれない。
誤りです。預貯金の払戻などの金銭管理も含まれます。
3 支援内容には、介護保険サービス事業者との契約締結などの手続き援助が含まれるが、介護保険サービスの苦情対応の援助は含まれない。
誤りです。支援内容には、介護保険サービス事業者との契約締結などの手続き援助や、介護保険サービスの苦情対応の援助も含まれます。
4 支援内容には、要介護認定等に関する調査に立ち会い、本人の状況を正しく調査員に伝えることが含まれる。
正しいです。
5 都道府県・指定都市社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会が、事業全体の運営監視と利用者からの苦情解決に当たる。
正しいです。
第23回 問題59
成年後見制度について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意が必要である。
2 後見開始の申立は、本人の所在地を管轄する地方裁判所に行う。
3 市町村は、当該市町村における成年後見制度の利用の促進に関する施策についての基本的な計画を定めるよう努めることとされている。
4 後見開始の審判は、事実上婚姻関係と同様の事情にある者も請求することができる。
5 任意後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、任意後見監督人となることができない。
この問題は成年後見制度の仕組みや申立て、審判、監督人の資格など、法律や手続きに関する基本的な知識を問うものです。法定後見(後見・保佐・補助)の申立手続き、市町村の責務、そして任意後見制度の仕組みと制限について、正確な法律知識(民法・成年後見制度利用促進法)が理解できているかが試されています。
1 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意が必要である。
これは正解。「補助」は判断能力の不十分な方が対象であり、本人の自己決定権を尊重するため、本人以外の者が補助開始を申し立てる場合には必ず本人の同意が必要です。なお、より判断能力が低下している「後見」や「保佐」の開始審判では、本人の同意は要件とされていません。この違いは試験の頻出ポイントなので「補助だけ本人同意が必要」と必ず覚えておきましょう。
2 後見開始の申立は、本人の所在地を管轄する地方裁判所に行う。
これは誤り。後見開始の申立先は「地方裁判所」ではなく、「家庭裁判所」です。成年後見制度や家事事件に関する手続きは、すべて本人の住所地を管轄する家庭裁判所が担当します。裁判所の種類を入れ替えた典型的な引っ掛け問題であり、試験対策として「後見開始の申立て=家庭裁判所」と確実に覚えましょう。
3 市町村は、当該市町村における成年後見制度の利用の促進に関する施策についての基本的な計画を定めるよう努めることとされている。
これは正解。市町村には、国が定める基本計画を勘案して、地域の実情に応じた成年後見制度の利用を促進する計画を定めるよう「努力義務」が課せられています(成年後見制度利用促進法・第14条)。これは市町村における権利擁護の地域ネットワークを構築するため、市町村が主体的な役割を果たすことが法律でも明記されています。
4 後見開始の審判は、事実上婚姻関係と同様の事情にある者も請求することができる。
これは誤り。後見開始の審判を申し立てることができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長などです。「事実上婚姻関係と同様の事情にある者(内縁の配偶者)」は、法律上の配偶者や親族に含まれないため、申立権者(申立人)にはなれません。身よりがない場合は「市町村長」が申し立てる仕組みとセットで覚えましょう。
5 任意後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、任意後見監督人となることができない。
これは正解。任意後見監督人は、任意後見人が適正に任務を遂行しているかをチェックする重要な立場です。そのため、任意後見人の配偶者、直系血族(親や子)、兄弟姉妹といった利害関係が生じるおそれのある親族は、公平な監督ができない可能性があるため選任されません(欠格事由)。制度の客観性と信頼性を保つためのルールとして覚えておきましょう。
第24回 問題60
成年後見制度について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 親族も成年後見人になることができる。
2 市町村長は、四親等内の親族がいる場合には、後見開始の審判の請求をすることはできない。
3 その理念の一つとして、成年被後見人等の自発的意思の尊重がある。
4 成年後見人は、家庭裁判所の許可を得ずに、成年被後見人の居住用不動産を処分することができる。
5 後見開始の審判は、本人も請求することができる。
この問題は成年後見制度の基本的な運用や理念、後見人の資格や権限、申し立ての条件について問うものです。成年後見制度は認知症や精神障害などで判断能力が不十分な人の権利保護を目的としており、本人の意思尊重と法的手続きの仕組みなどが頻出ポイントです。
1 親族も成年後見人になることができる。
これは正解。成年後見人には、弁護士や司法書士などの専門職だけでなく、本人の「親族」もなることができます。近年は専門職が選ばれる割合が高いですが、法律上(民法)では親族を排除しているわけではなく、本人や家族にとって心理的負担が少ないという理由により選任されることがあります。ただし、誰を後見人に選ぶかの最終決定権は、親族の希望に関わらず「家庭裁判所」にあることも重要な知識として覚えておきましょう。
2 市町村長は、四親等内の親族がいる場合には、後見開始の審判の請求をすることはできない。
これは誤り。市町村長は、四親等内の親族がいる場合であっても、その親族による申立てが期待できないときなどには、本人の権利擁護のため後見開始の審判を請求(申立て)することができます。実務でも身寄りのない方や親族の協力が得られないケースで用いられ、介護支援専門員にも必須の知識です。
3 その理念の一つとして、成年被後見人等の自発的意思の尊重がある。
これは正解。成年被後見人等の「自発的意思の尊重」とは、本人がどのような生活を望んでいるのかという意思や希望をできる限り尊重することです。また成年後見制度は、「ノーマライゼーション」「自己決定権の尊重」「身上保護の重視」を基本理念としています。そのため、制度の運用にあたっては、成年被後見人等の自発的意思の尊重、および現在の生活状態への配慮(身上保護の重視)が法律で義務づけられています。単に財産を守るだけの制度ではないということを覚えておきましょう。
4 成年後見人は、家庭裁判所の許可を得ずに、成年被後見人の居住用不動産を処分することができる。
これは誤り。成年後見人が、被後見人の「居住用不動産(自宅など)」を売却・賃貸・解約等で処分する場合は、必ず家庭裁判所の許可が必要です。認知症高齢者が住み慣れた家を失うことは生活に重大な影響を及ぼすため、後見人の独断での処分は厳格に禁止されています。実務でも試験でも非常に重要なルールです。
5 後見開始の審判は、本人も請求することができる。
これは正解。後見開始の審判は、「本人が家庭裁判所に申し立てる」場合も認められています。これは、本人の判断能力が不十分になっているとはいえ、自己決定権を尊重する制度の観点から、本人自身にも申立権が認められているものです。また、本人以外に後見開始の審判を請求できるのは、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長などが対象とされています。
第25回 問題59
成年後見制度について正しいものはどれか。2つ選べ。
1 任意後見制度では、判断能力を喪失した人に、保佐人や補助人をつけることができる。
2 都道府県知事は、65歳以上の者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、後見開始の審判の請求をすることができる。
3 本人と任意後見受任者の同意があれば、公正証書以外の方法でも任意後見契約が成立する。
4 成年後見制度の利用の促進に関する法律に定められた基本理念には、成年被後見人等の意思決定の支援と身上の保護が適切に行われるべきことが含まれる。
5 成年被後見人の法律行為は、原則として、取り消すことができる。
この問題は成年後見制度の種類や申立権者、契約方法、制度の基本理念、法律行為の効力に関する理解を問うものです。例年同様の出題傾向にあるため、任意後見と法定後見の違いや、制度を利用する際の法的なポイントを正確に把握している必要があります。
1 任意後見制度では、判断能力を喪失した人に、保佐人や補助人をつけることができる。
これは誤り。保佐人や補助人は、法定後見制度における後見類型であり、任意後見制度で選任されるものではありません。任意後見制度では、本人が判断能力のあるうちに任意後見人となる者を契約で定めておき、判断能力が低下した後に任意後見監督人の選任を受けて支援が開始されます。
2 都道府県知事は、65歳以上の者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、後見開始の審判の請求をすることができる。
これは誤り。高齢者の福祉を図るため特に必要がある場合に申立てを行えるのは、「市町村長」であり、都道府県知事にはその権限はありません。このような引っ掛け問題が頻出なため、試験では「市町村長も申立権者である」という点は必ず押さえておきましょう。
3 本人と任意後見受任者の同意があれば、公正証書以外の方法でも任意後見契約が成立する。
これは誤り。任意後見契約は、本人の将来の生活を守る極めて重要な契約であるため、法律(任意後見契約に関する法律)により必ず「公正証書」で作成しなければならないと厳格に定められています。どれだけ本人と受任者の間で強い同意や信頼関係があったとしても、公正証書以外の方法(私文書や口頭など)では契約は成立しません。
4 成年後見制度の利用の促進に関する法律に定められた基本理念には、成年被後見人等の意思決定の支援と身上の保護が適切に行われるべきことが含まれる。
これは正解。「成年後見制度利用促進法」の基本理念には、単なる財産管理だけでなく、本人の意思決定の支援、および身上の保護が適切に行われるべきことが明確に定められています。「自己決定の尊重」と「身上保護の重視」という制度の根幹の趣旨を、正しく理解しているかが問われています。
5 成年被後見人の法律行為は、原則として、取り消すことができる。
これは正解。成年被後見人は本来「判断能力を欠く」状況にあるため、本人が行った法律行為(商品の購入契約など)は、原則として「取り消す」ことができます。ただし、スーパーでの食料品の購入など「日用品の購入その他日常生活に関する行為」については、本人の自立尊重のため例外的に取り消すことができない点も合わせて覚えておきましょう。
第26回 問題58
成年後見制度について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 成年後見人の職務には、身上保護(身上監護)と財産管理が含まれる。
2 後見開始の申立は、本人の所在地を管轄する地方裁判所に対し行わなければならない。
3 成年後見制度の利用の促進に関する法律では、国の責務が定められている。
4 法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、後見と補助の2類型に分かれている。
5 成年後見制度利用促進基本計画では、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりが必要とされている。
この問題は成年後見制度の基本的な役割、申立先、法律上の責務、制度の類型、そして利用促進に関する計画内容を問うものです。成年後見制度は判断能力が不十分な人を法的に保護し、生活と財産の管理を支援する仕組みで、関連する法律や行政の役割を理解することが重要です。
1 成年後見人の職務には、身上保護(身上監護)と財産管理が含まれる。
これは正解。成年後見人の主な職務は、本人に代わって預貯金の管理や契約を行う「財産管理」と、医療・介護契約や施設入所手続きを行う「身上保護(身上監護)」の2つです。ただし、実際の「介護行為(食事や入浴の介助など)」そのものは後見人の職務には含まれない点も理解しておきましょう。
2 後見開始の申立は、本人の所在地を管轄する地方裁判所に対し行わなければならない。
これは誤り。後見開始の申立先は、本人の住所地を管轄する「家庭裁判所」であり、地方裁判所ではありません。試験では同様の引っ掛け問題が頻出のため、必ず覚えておきましょう。
3 成年後見制度の利用の促進に関する法律では、国の責務が定められている。
これは正解。「成年後見制度利用促進法」では、認知症高齢者等の権利擁護を社会全体で支えるため、「国の責務」が明確に定められています。国は制度の利用促進に関する施策を総合的かつ計画的に策定・実施する責務を負っています。
4 法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、後見と補助の2類型に分かれている。
これは誤り。法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、重い順に「後見」「保佐」「補助」の「3類型」に分かれています。
5 成年後見制度利用促進基本計画では、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりが必要とされている。
これは正解。国が定める「成年後見制度利用促進基本計画」では、誰もが権利擁護支援を受けられるよう、家庭裁判所や専門職、地域の福祉関係機関が一体となった「地域連携ネットワークづくり」が必要とされています。
第27回 問題59
成年後見制度について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 親族は、成年後見人になることができない。
2 後見開始の審判は、本人も請求することができる。
3 法人も、成年後見人に選任されることがある。
4 身上保護(身上監護)とは、本人に代わって財産を管理することをいう。
5 成年被後見人の法律行為は、原則として、取り消すことができる。
1 親族は、成年後見人になることができない。
これは誤り。成年後見人には、弁護士や司法書士のほか、本人の「親族」もなることができます。近年は専門職の選任割合が高いものの、親族後見人は本人にとって心理的負担が少ないという点から、選任されることもあります。ただし、どの親族が選ばれるかは、家庭裁判所が決定する仕組みになっています。
2 後見開始の審判は、本人も請求することができる。
これは正解。後見開始の審判は、「本人」も自ら家庭裁判所に請求(申立て)することができます。後見開始の審判を請求できる者には、本人のほか、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長などがあります。
3 法人も、成年後見人に選任されることがある。
これは正解。成年後見人には、個人の専門職や親族だけでなく、「法人(社会福祉協議会やNPO法人など)」も選任されることがあります。これを「法人後見」と呼び、永続的かつ組織的な支援ができるため、近年利用が推進されています。「後見人は個人に限られる」という思い込みに注意が必要です。
4 身上保護(身上監護)とは、本人に代わって財産を管理することをいう。
これは誤り。「本人に代わって財産を管理すること」は、身上保護ではなく「財産管理」の説明です。後見人の職務は「財産管理」と、医療や介護の契約等を行う「身上保護(身上監護)」の2つに大別されますが、後見人自らが直接介護などのサービスを提供するわけではない点も試験対策として覚えておきましょう。
5 成年被後見人の法律行為は、原則として、取り消すことができる。
これは正解。成年被後見人は判断能力を欠く常況にあるため、本人が行った法律行為(高額な商品の購入契約など)は、原則として「取り消す」ことができます。ただし、日常生活に必要な「日用品の購入」については例外として取り消せない点もセットで覚えておきましょう。
第28回 問題59
成年後見制度について正しいものはどれか。2つ選べ。
1 成年後見制度の理念の一つとして、成年被後見人等の自発的意思の尊重がある。
2 成年後見人の選任は、都道府県社会福祉協議会が行う。
3 成年後見人は、弁護士に限られる。
4 任意後見では、任意後見人の不正や権限濫用がないよう監督するために、任意後見監督人が選任される。
5 任意後見人の配偶者は、任意後見監督人となることができる。
1 成年後見制度の理念の一つとして、成年被後見人等の自発的意思の尊重がある。
これは正解。成年後見制度は、「ノーマライゼーション」と「自己決定の尊重」を基本理念としています。そのため、制度の運用にあたっては、成年被後見人等の意思の尊重とともに、その心身の状態や生活状況に配慮した支援が行われることが求められています。
2 成年後見人の選任は、都道府県社会福祉協議会が行う。
これは誤り。成年後見人の選任を行うのは「都道府県社会福祉協議会」ではなく「家庭裁判所」の役割です。都道府県社会福祉協議会は、日常生活自立支援事業の実施主体や成年後見制度の利用促進に関する相談支援等を行いますが、成年後見人選任の権限はありません。
3 成年後見人は、弁護士に限られる。
これは誤り。成年後見人は「弁護士」に限られるものではありません。司法書士や社会福祉士などの専門職、本人の「親族」、さらには社会福祉協議会などの「法人」もなることができます。「〜に限られる」という限定的な表現は、間違い選択肢であることが多いため注意が必要です。
4 任意後見では、任意後見人の不正や権限濫用がないよう監督するために、任意後見監督人が選任される。
これは正解。任意後見制度では、任意後見人が本人の財産を不正に流用したり、権限を濫用したりしないよう、必ず「任意後見監督人」が選任されます。任意後見監督人は、任意後見人の事務を監督し、必要に応じて家庭裁判所へ報告する役割を担います。
5 任意後見人の配偶者は、任意後見監督人となることができる。
これは誤り。任意後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、利益相反を防止する観点から法律上、任意後見監督人になることができません。これは、公正な監督の立場を確保し、本人の利益を守るための厳格で重要な規定とされています。
次の記事
次は高齢者虐待防止法です。



コメント