地域共生社会
地域共生社会とは、子ども・高齢者・障害者などすべての人々が地域、暮らし、生きがいをともに創り、高め合うことができる社会のことです。
様々な社会的孤立の形
福祉を必要としているのは高齢者、障害者、児童だけではありません。この3者の縦割りの法体系によって、制度の狭間で福祉の恩恵を受けられない人たちが社会的に孤立し、困窮しているのが現代の社会です。

地域社会での孤立は、ひきこもりやゴミ屋敷の問題など、様々な形で社会問題になっています。
限界集落
限界集落とは、65歳以上の高齢者が集落人口の50%を超え、集落の共同活動の機能が低下し、社会的共同生活の維持が困難な状態にある集落のことです。
老老介護
介護を要する高齢者を同居している高齢者が介護することを老老介護といいます。
ひきこもり
ひきこもりは、以下のように定義されています。
様々な要因の結果として、社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職員を含む就労、家庭外での交遊)を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を示す現象概念。
※ ひきこもりは、原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神症性の現象とするが、実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くない。
「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」より

ひきこもりの定義として、「概ね6か月以上」という期間が示されている点は覚えておいてね。
8050問題
長期のひきこもり等によって50代になった子どもの生活を、80代の親が支えるという問題を8050問題といいます。
ひきこもりという言葉が社会にではじめるようになった1980年代~90年代は若者の問題とされていましたが、その後ひきこもりが長期化し、気がつけば当時の若者が50代、その親が80代となり社会的に孤立、生活が立ち行かなくなる深刻なケースが目立ちはじめています。
7040問題から8050、9060へと移行しています。

8050問題の名付け親は、大阪府豊中市社会福祉協議会のコミュニティソーシャルワーカーの勝部麗子さんだね。コミュニティソーシャルワーカーはこのような様々な地域社会での問題に介入していくんだよ。NHKのドラマ「サイレントプア」では深田恭子さんがコミュニティソーシャルワーカーを演じて、ゴミ屋敷の問題などに取り組んでいたね。
ニート
ニート(NEET)は、 Not in Education, Employment or Training の略で、15歳~34歳までの、家事・通学・就業をせず職業訓練も受けていない者とされています。
労働力調査(総務省)には「若年無業者」とされていますが、ニートとほぼ同義です。
2022年の若年無業者の割合は2.3%となっています。

ヤングケアラー
ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものことです。子ども・若者育成支援推進法では「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」として、ヤングケアラーを、国・地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象としています。
本来なら享受できたはずの、勉強に励む時間、部活に打ち込む時間、友人と遊ぶ時間などと引換えに、家事や家族の世話をしていて、自分でもヤングケアラーであるという認識がないことが多いです。
ダブルケア
育児と介護の両方を担うことをダブルケアと言います。
晩婚化や高齢出産化などにより、育児と親の介護のタイミングが重なる人が増えています。
ホームレス
ホームレス自立支援法に規定されているホームレスの定義は上記の通りです。
第二条 この法律において「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう。
共生型サービス
戦後から福祉の主たる対象は高齢者、障害者、児童の三者で、縦割りで発展してきました。
地域共生社会では縦割りを超えて柔軟にサービス提供ができるようにとのことで「共生型サービス」が2017年に創設されました。
それぞれ「介護保険法」と「障害者総合支援法」と「児童福祉法」で年齢で区切られている福祉サービスを、受けやすいようにする仕組みです。
具体的には、65歳以上になると障害福祉サービスの利用者は介護保険サービスに移らなければならない、この解消が大きな目的の1つです。
<介護保険優先原則>
障害福祉サ―ビスに相当するサービスが介護保険サービスにあれば、介護保険サービスの利用が優先される
具体的には、障害福祉サービスで利用していた以下の3種類については介護保険で同様のサービスがあるので、65歳になると事業所を移る必要が出てくるという事です。
| 種類 | 介護保険サービス | 障害福祉サービス等 | |
|---|---|---|---|
| ホームヘルプ | 訪問介護 | ⇔ | 居宅介護 重度訪問介護 |
| デイサービス | 通所介護 (地域密着型を含む) |
⇔ | 生活介護 自立訓練 児童発達支援 放課後等デイサービス |
| ショートステイ | 短期入所生活介護 (予防を含む) |
⇔ | 短期入所 |
上の表を見てわかるように、ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイといういわゆる居宅サービス(在宅福祉サービス)が、共生型サービスとして提供されます。
障害者が65歳になって、通っていた事業所を移らなくてもいいように、ということで、結局、「共生型サービス」とは、介護保険又は障害福祉のいずれかの指定を受けた事業所がもう一方の制度における指定を受けやすくする制度で、介護保険法と障害者総合支援法で共通するサービスについて、指定を受けやすくして同一事業所で提供できるようにする仕組みです。
なので、65歳以上になって介護保険サービスか障害福祉サービスかを選べるというわけではありません。
65歳以上になると共通するサービスがあれば介護保険サービスが優先される、その原則は変わっていません。
65歳になった障害者が突然介護保険サービスを受けると、それまで無料だった障害福祉サービスが介護保険では1割負担になり利用料が発生することになります。
このような問題は未解決のままで、単に事業所を移らなくてもよくなったというだけです。
共生型サービスでは、例えば介護保険の通所介護は人員基準が1:5、生活介護は1:3などと基準が違います。
人員基準が違うので指定を受けられないとなると困るので、共生型サービスの人員、運営、設備基準は都道府県条例で定めるようになっています。
結局、社会保障の中心は社会保険なので、障害福祉と介護保険を比べたら介護保険優先なのは当然と言えば当然です。
でも、利用者目線で考えれば、どちらか選べるようになればなぁということです。

介護保険サービスと障害福祉サービスの財源を比較すると、介護保険は大半が保険料、障害福祉サービスはすべて税金、だから介護保険優先原則は当然といえば当然・・・。
富山型デイサービス
そもそも共生型サービスの原型は、富山県で始まりました。
「富山型デイサービス」という形で、高齢者も障害者も児童も同じデイサービスを利用する形がありました。
高齢者はかわいい子どもと接する機会が得られ、障害者は居場所が見つかり高齢者や児童の面倒を見るという役割が見い出せ、児童は高齢者や障害者への思いやりの心が身につくという、画期的な仕組みでした。
当時は共生型サービスという仕組みは法的に規定されていませんから、「基準該当事業所」として運営していたようです。

基準該当事業所とは、本来の指定事業所に求められる人員配置基準や設備基準などを満たしていないものを、基準を満たしているとみなし、市町村の登録を受けて実施する事業所だよ。もとは離島や中山間地などの過疎地など、基準を満たすことが困難である事業所を想定されてできた制度だったけど、富山型デイサービスのように、介護保険と障害福祉の一方の指定基準を満たしている場合、もう一方の指定基準を満たしているとみなして基準該当の登録を受けることにより、同一事業所において介護保険サービス・障害福祉サービスの両方を提供することができるよ。
ということで、上記の例を見てわかるように、共生型サービスのそもそもの主旨は、富山型デイサービスのように対象を限定せずサービスを提供することにあり、同一事業所で高齢者も障害者も児童もサービスを受けられるようにすることが狙いです。
例えば介護保険制度の「通所介護」、障害者総合支援法の「生活介護」、児童福祉法の「児童発達支援」の3デイサービスが同一事業所で提供できれば、高齢者も障害者も児童も、それぞれにメリットを享受できます。

富山型デイサービスは素晴らしい形だよ!
動画を見て!
過去問
第21回 問題9
共生型居宅サービスについて正しいものはどれか。2つ選べ。
1 障害福祉サービスのうち介護保険サービスに相当するサービスを提供する指定事業所は、介護保険法に基づく居宅サービス事業所の指定も受けることができる。
2 障害児通所支援に係る事業所は、共生型居宅サービス事業所の指定を受けることができない。
3 短期入所生活介護については、共生型居宅サービスはない。
4 事業所の従業者の人員は、市町村の条例で定める員数を満たさなければならない。
5 事業の設備及び運営は、都道府県の条例で定める基準に従わなければならない。
共生型サービスとは、2018年(平成30年)の介護保険法改正で新設された、障害福祉サービス事業所が介護保険サービスも一体的に提供できる仕組みのことです。試験対策としては、「どのサービスが対象であるか」や「指定・基準の権限はどこか」など、対象となる事業所と人員、設備基準などが重要ポイントとなります。
1 障害福祉サービスのうち介護保険サービスに相当するサービスを提供する指定事業所は、介護保険法に基づく居宅サービス事業所の指定も受けることができる。
これは正解。共生型サービスとは、障害福祉サービス(居宅介護、生活介護など)の指定を受けている事業所が、介護保険の共生型居宅サービス(訪問介護、通所介護など)の指定を受けやすくする特例措置をいいます。障害者が65歳になっても慣れ親しんだ事業所を継続利用できる仕組みとなっています。
2 障害児通所支援に係る事業所は、共生型居宅サービス事業所の指定を受けることができない。
これは誤り。障害児通所支援(児童発達支援、放課後等デイサービス)の事業所も、共生型居宅サービス(共生型通所介護、共生型地域密着型通所介護)の指定を受けることが可能です。障害児であっても、共生型サービスの対象に含まれる点は、制度の柔軟性を示すポイントとして重要です。
3 短期入所生活介護については、共生型居宅サービスはない。
これは誤り。共生型サービスとして認められている居宅系サービスには、「訪問介護」「通所介護」「短期入所生活介護(ショートステイ)」の3種類があり(地域密着型等を含む)、ショートステイは対象外と判断しがちですが、間違えないように覚えましょう。
4 事業所の従業者の人員は、市町村の条例で定める員数を満たさなければならない。
これは誤り。共生型サービスにおける事業所の従業者の人員は、都道府県の条例で定められるため誤りです。通常の居宅サービスと同様、都道府県が条例で決めた基準に沿ってサービスを提供する必要があります。
5 事業の設備及び運営は、都道府県の条例で定める基準に従わなければならない。
これは正解。設備や運営基準においても都道府県の条例で定められます。共生型サービスも「居宅サービス」の一部として位置づけられるため、都道府県の条例に従わなければなりません。
第23回 問題3
近年の高齢者や介護に関する状況の説明として適切なものはどれか。3つ選べ。
1 介護を要する高齢者を高齢者が介護する「老老介護」が増加している。
2 80代の親と50代の子が、ひきこもりなどの困難を抱えつつ、社会的に孤立している「8050問題」が顕在化している。
3 育児と介護を同時に行う、いわゆる「ダブルケア」が問題となっている。
4 介護職員の離職率の増加が、「介護離職」として問題となっている。
5 人口の半数以上を55歳以上の者が占める集落を「限界集落」という。
最近の高齢社会においては、老老介護や8050問題、ダブルケアなどが問題視されており、少子高齢化による高齢者の割合の増加や、核家族化、晩婚化、単身世帯の増加などに伴い、高齢者を取り巻く環境が様変わりし、多くの生活課題を抱えているという現状にあります。試験対策としては、このようなキーワードを理解し、現在の高齢世帯が抱える問題を理解しておく必要があります。
1 介護を要する高齢者を高齢者が介護する「老老介護」が増加している。
これは正解。「老老介護」とは、高齢者の介護者が(夫婦などの)高齢者を介護する状態をいいます。核家族化や介護の手不足により、介護者自身が高齢になる傾向がみられています。
2 80代の親と50代の子が、ひきこもりなどの困難を抱えつつ社会的に孤立している「8050問題」が顕在化している。
これは正解。「8050問題」とは、引きこもりの50代の子どもと、80代の親が、様々な生活課題を抱えながら同居する状態をいいます。
3 育児と介護を同時に行う、いわゆる「ダブルケア」が問題となっている。
これは正解。「ダブルケア」とは、親の介護と子育てを同時に行うこと、晩婚化や核家族化などによって、ライフイベントの重複により、課題を抱えることが問題視されています。
4 介護職員の離職率の増加が、「介護離職」として問題となっている。
これは誤り。「介護離職」とは、単に介護職員の離職率の問題ではなく、親の介護や家族の世話で、仕事を離職しないといけなくなることを指します。
5 人口の半数以上を55歳以上の者が占める集落を「限界集落」という。
これは誤り。「限界集落」とは、65歳以上の高齢者が、集落全体の50%を占める過疎地域のことをいいます。「55歳以上」という表現が間違いです。
第26回 問題2
地域福祉や地域共生社会について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 市町村は、包括的な支援体制を整備するため重層的支援体制整備事業を実施しなければならない。
2 市町村は、市町村地域福祉計画を策定するよう努めるものとする。
3 地域共生社会とは、子ども・高齢者・障害者などすべての人々が地域、暮らし、生きがいをともに創り、高め合うことができる社会のことである。
4 介護保険法に基づく地域支援事業等を提供する事業者が、解決困難な地域生活課題を把握したときは、その事業者が自ら課題を解決しなければならない。
5 高齢者と障害児・者が同一の事業所でサービスを受けやすくするための共生型サービスは、介護保険制度と障害福祉制度の両方に位置付けられている。
地域共生社会とは、これまでの「受け手」と「支え手」という関係を超え、高齢者や障害者、子どもなど、すべてが共に支え合い、生活課題を地域社会全体で考える仕組みを指しています。これまでの縦割り行政ではなく、分野を超えた支援体制を整えることが求められています。
1 市町村は、包括的な支援体制を整備するため重層的支援体制整備事業を実施しなければならない。
これは誤り。重層的支援体制整備事業は、市町村が行う事業ではありますが、義務ではなく「任意」となります。昨今の地域課題に対する施策として、市町村が中心になり事業を進める必要性は高くなっていますが、努力義務である点を覚えておく必要があります。
2 市町村は、市町村地域福祉計画を策定するよう努めるものとする。
これは正解。市町村地域福祉計画は、社会福祉法(第107条第1項)において、市町村の努力義務として規定されています。
3 地域共生社会とは、子ども・高齢者・障害者などすべての人々が地域、暮らし、生きがいをともに創り、高め合うことができる社会のことである。
これは正解。地域共生社会とは、受け手や支え手などを越えて、地域全体で共に支え合う仕組みのことで、これまでの縦割り行政を廃止し、分野を超えて支援する体制が進められています。
4 介護保険法に基づく地域支援事業等を提供する事業者が、解決困難な地域生活課題を把握したときは、その事業者が自ら課題を解決しなければならない。
これは誤り。地域支援事業等を提供する事業者や、その他の事業者が解決困難な地域課題を把握したときは、地域における行政機関や地域住民などと協力して課題を解決するという視点が大切で、事業者自らが問題解決しなければならない訳ではありません。
5 高齢者と障害児・者が同一の事業所でサービスを受けやすくするための共生型サービスは、介護保険制度と障害福祉制度の両方に位置付けられている。
これは正解。共生型サービスとは、高齢者や障害(児)者が同じ事業所で継続してサービスを受けやすくする制度で、年齢条件等でサービスを受けることができなくなるという問題を緩和する仕組みです。介護保険事業を行う事業所が、障害者総合支援法における事業所の指定を受けやすくする仕組などを言います。
第27回 問題1
わが国の近年の介護を取り巻く状況の説明として適切なものはどれか。3つ選べ。
1 介護を要する高齢者を同居している高齢者が介護する「老老介護」は、減少傾向にある。
2 育児と介護を同時に担う「ダブルケア」が課題となっている。
3 「ヤングケアラー」への支援が課題となっている。
4 介護者が仕事と介護を両立できるよう、法律により介護休暇及び介護休業が制度化されている。
5 特別養護老人ホームなどの老人ホームでの死亡者数は、減少傾向にある。
1 介護を要する高齢者を同居している高齢者が介護する「老老介護」は、減少傾向にある。
これは誤り。昨今の核家族化や少子高齢化など、平均寿命が延びることで高齢化の進展を伴うのが現状です。老老介護の状況も増加傾向にあり社会問題となっていることを理解しておきましょう。
2 育児と介護を同時に担う「ダブルケア」が課題となっている。
これは正解。ダブルケアとは、育児と介護を同時に行う状況を言います。晩産化や一人親世帯などで、仕事を抱えながら介護も担うことが問題になっています。
3 「ヤングケアラー」への支援が課題となっている。
これは正解。ヤングケアラーとは、本来家族が行うべき介護や世話を、日常的に担っている子どもや若者を指し、学習や社会的な交流に影響を及ぼすことが問題とされています。また、介護や世話を担っている子ども自身が、ヤングケアラーであることを自覚しにくいことが問題で、行政等の実態調査が進められています。
4 介護者が仕事と介護を両立できるよう、法律により介護休暇及び介護休業が制度化されている。
これは正解。育児・介護休業法により介護による休暇、介護休業などの支援体制が設けられており、介護や世話を理由に離職しないといけない状態の緩和を図る制度が整えられつつあります。
5 特別養護老人ホームなどの老人ホームでの死亡者数は、減少傾向にある。
これは誤り。特別養護老人ホームのような介護施設を利用する高齢者が増え、施設側でも看取りの体制を整備するなどして、近年では、施設で死亡する高齢者が増加傾向にあり、施設介護の役割も高まっています。
次の記事
次からはいよいよ社会保険制度に入っていきます。



コメント